実は、人間関係が壊れるときというのは、どちらかが、どちらかに対して「シニカル」な姿勢を持ったときです。ここで「シニカル」という言葉は、「皮肉な」という意味よりも、「斜に構えた」という意味に近い言葉です。すなわち、「どうせ、彼は」「しょせん、あの人は」との枕詞で相手を見る姿勢であり、「正対」ということの対極にある姿勢と言えます。我々は、このシニカルな姿勢に陥った瞬間に、目の前にいる一人の人間の人生に対する「敬意」を失いはじめます。そして、そのとき、人間関係もまた深いところで壊れはじめるのです。すなわち、「正対」するとは、シニカルな姿勢に陥ることなく、相手の人生に深い敬意を持って接することに他なりません。(中略)
私のささやかな経験ですが、高校時代にサッカー部に所属したとき、教えられたことがあります。サッカーのボールの取り合いにおいて、「ぶつかりそうになったら、腰を引かずに正面からぶつかれ」とのアドバイスを受けました。腰を引いたときほど怪我をしやすいと教えられたのです。その言葉が、いまも心に残っています。人間関係も、そうではないでしょうか。互いに「正対」すること。こころを込めて真剣にぶつかること。そのとき、人間として大切なものを失うことは、決してありません。仮に、部下との表面的な人間関係が崩れたとしても、十年の歳月を超えて互いに理解しあえるときが、必ず来る。そうした深い信念と人間に対する姿勢が、いま、我々マネジャーに求められているのではないでしょうか。
